上野日記

自分が主人公の小さな物語

吉本ばななの『キッチン』を読んだ

吉本ばなな*1の『キッチン』を読んだ。 この小説は彼女のデビュー作で、1987年に海燕新人文学賞、1988年には泉鏡花文学賞を受賞した作品だ。この本には、続編の『満月―キッチン2』と大学の卒業制作で学部長賞を受賞した『ムーンライト・シャドウ』が併録されている。『キッチン』は映画化もされているらしい。

デビュー当初テレビ等で話題になっていたので、「吉本ばなな」の名前も『キッチン』もかすかに覚えていた。本屋をウロウロしていて時に、ふと目についたので読んでみようかと思った。
文字のフォントがいつも読んでいる本とちょっと違う(文字の線がちょっと細い)のと、会話のカギ括弧“「」”の最後に“。”が打ってある*2ので、ちょっと変な感じがした。

内容は、幼いころ両親を、そして祖母を亡くし孤独になった女子大学生の主人公が、祖母の知り合いである同じ大学の青年とその母親(実際は性転換した父親)の家に居候し、その交流を描いている。続編の『満月―キッチン2』では、なんでそうなるの、と思わずつっこみたくなった。テーマは、人の死を乗り越えて生きること、なのだろう。『ムーンライト・シャドウ』も恋人が死に、そして不思議な体験をする……


私の場合も、祖母が亡くなったのは大学生の時だった。アパートの隣に住んでいた友達から車を借りて熊本の実家まで帰った。既に意識はなく話をすることができず、驚きのあまり声も掛けることができなかった。今流行りの植村花菜の「トイレの神様」を聴いてもちょっと思い出してしまう。もう、25年以上も前のことなのに……。葬式の時、ビックリするほど涙が出たのを思い出した。

*1:ペンネームは「よしもとばなな」。子どもの名前を姓名判断で考えていたら、自分の名前もよくなかったので改名したらしい。

*2:一般的に、小説では“。”は打たないのが慣例らしく、戦前の古い小説には“。”は打たれていたらしい

© 2002-2024 Shuichi Ueno