上野日記

自分が主人公の小さな物語

村上春樹の『ノルウェイの森』を読んだ

村上春樹の『ノルウェイの森』を読んだ。正確には「読み返した」だ。

見ての通り文庫本で、たぶん18年前に購入したものだ。最近の文庫本の表紙は単行本と同じような例の緑と赤のカバーになっているが、昔はこのように帯のみがその色をしていた。

その『ノルウェイの森』が映画化される(公開は12月)ということでテレビでも宣伝していた。はて、たしか読んだはずなのに内容を全く覚えていない。山奥の館に主人公が遊びに行ったよなぁ(実際は、山奥の療養所に面会に行った、が正しい)くらいしか思い出せなかった。ということで、本棚の奥(文庫本が2段の奥)から取り出し、読み返してみることにした。18年の歳月で本にはちらほらとシミが浮き上がってきていた。まるで古本屋で購入した本のようだ。
村上春樹の本は20年ぐらい前に何冊か読んだが、その良さがよくわからなかった。「羊男」なんて謎のままだ。『ノルウェイの森』もそんな感じだったかもしれない。ま、元々本を読むのは遅かったし、時間をおいてちょっとずつ読んでいたのでちゃんと頭の中で消化しきれていなかったのかもしれない。だが、今回は一気に読んだのでその物語に呑みこまれていった。いろんな人との出会いや別れが彼を大人にしていったのだろう。最後はとても切なく涙が出てきてしまった。たぶん、前回読んだ時もこんな気持ちになったと信じたい。

学生時代、いろいろと面白かった。講義をさぼったり、徹夜でマージャンやったり、友達と車で26時間かけて九州を一周したり、サークル活動にのめり込んだりと楽しいことも多かった。ただ、この小説を読んでいると、もっとたくさんの人と話しておくべきだったかもしれないとちょっと後悔している。悔やんでも仕方ない。

「私、あなたに忠告できることは全部忠告しちゃったから、これ以上もう何も言えないのよ。幸せになりなさいとしか」といってくれたレイコさんのような人と出会っていたかった。

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