上野日記

自分が主人公の小さな物語

現実にすればいいだけのことです

『「現実的ではない」と言われてあきらめるのですか。現実にすればいいだけのことです』とは、日本テレビ系列で放送された「ハケンの品格」の主人公「大前春子(篠原涼子)」が、ダメダメな主任の「里中賢介(小泉孝太郎)」に対して発した言葉だ。夕方に再放送をしている*1のをたまたまチャンネルを変えたら、このセリフを大前さんが言っていた。結構面白く視聴率もよかった*2ので続編を期待しているのだが、その兆しはなさそうだ。ちなみに「黄金の豚-会計検査庁 特別調査課-」は観ていない。

実際、仕事の現場で「現実的ではない」と言われたことは記憶にない。これに関連して、以前テレビで聞いた「時期尚早と言う人間は100年経っても時期尚早と言う。前例がないと言う人間は200年経っても前例がないと言う」という言葉を思い出してしまった。と、連想ゲームのようにとりとめのない言葉がつながった時、20数年前ボストンに赴任していた頃のことを思い出してしまった。
ボストンに赴任していた私は、OSF/1というUnix系のOSを自社のメインフレームに移植する作業をしていた。メモリ管理を担当していた私は、実メモリの使用方法や仮想空間の構造をどのようにするか悩んでいた。ハードウェアの仕様書とにらめっこする日々が続いていた。常識的な仮想空間はOSが使用するカーネル空間とユーザプログラムが使用するユーザ空間が一つの仮想空間に同居するのが一般的だった。そこで、私が実現しようとした仮想空間の構造は、カーネル空間を一つの仮想空間に、ユーザ空間は別の仮想空間に配置する構造だった。以前に担当していたシステムではカーネル空間が足りずに、色々と問題が発生していたためだ。ハードウェアの仕様上問題なく実現できる設計だった。これを上司に相談し、設計内容を日本のハードウェア設計部署に相談したところ、「前例がない」という回答が返ってきて、上司もこの設計に賛成してくれなかった。泣く泣く設計は変更することになった。

日本に帰国後、米国エンジニアチームが作業を引き継いでくれた。しばらくして最新版のシステムは私が構想した「カーネルとユーザの仮想空間を分離した仮想空間」に設計変更されていた。私が実現しようとした設計が実現されて、とてもうれしかった。……と、昔を懐かしむ。

ただ、このカーネル・ユーザの仮想空間分離は、日本版システムに大きく影響した。日本版のハードウェアにしか実装されていないハードウェア(拡張記憶装置)の設計・実装に大きく影響したのだ。日本に帰国後、このシステムの日本版を担当していた私は、正月返上の休日出勤し、拡張記憶装置の設計変更を急遽する羽目になってしまった。とほほ。

*1:本放送は2007年1月-3月

*2:関東で最高26.0%。平均20.1%

© 2002-2017 Shuichi Ueno