上野日記

自分が主人公の小さな物語

東野圭吾『片想い』を読んだ

一年ぐらい前に購入し、最初の数ページを読んでほったらかしにしていた東野圭吾の『片想い』を読んだ。読書をあまりしない私にとって600ページ超の長編ミステリーはちょっときつかったが、本の半分を超える頃には、意外な展開に驚き、東野圭吾ワールドに引き込まれていった。

大学時代アメリカンフットボールの仲間と毎年飲み会を行い、卒業から十年目の飲み会から話は始まる。学生時代の最後の試合で負けたの話で盛り上がる。主人公はその飲み会の後、女子マネージャだった美月と再会するが、その姿は男性だった。そして彼女から殺人を告白されることからミステリーが展開していく。
性同一性障害という重いテーマを軸に、複雑に絡んだミステリーを解いていく。冒頭の飲み会の話(試合に負けた話)が後半になって思わぬ展開になったのには驚いた。些細なことが微妙に、そして複雑に絡んでいるのが面白い。そして、学生時代の友情と固い絆には涙した。そして題名の“片想い”とは……


性同一性障害・両性具有(半陰陽)の話が出てくるが、その昔子供(中学生ぐらいか)の頃、祖母から聞いた話を思い出した。明治40年生まれの祖母が子供の頃だから多分大正初期だろう、近所の女の子の股間に一物が付いていたと話してくれた。その時はそんなバカなで終わってしまったが、大人になって鈴木光司のミステリーホラー「リング」で貞子が両性具有(半陰陽)者だったのを観て、祖母の話を思い出していた。それからどれくらい経ってからだろメディアで性同一性障害が取り上げられるようになったのは……

今回の『片想い』で、また祖母の思い出が蘇った。

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