上野日記

自分が主人公の小さな物語

東野圭吾の探偵ガリレオ『容疑者χの献身』を読んだ

病院の診察までの待ち時間はいつも長いので、何か本でも買っておこうと思い、駅近くの有隣堂に立ち寄った。最初、自転車関連かギター関連の雑誌でもと考えていたら山積みになっている『容疑者χの献身』の文庫本が目に入った。映画化でそのCMを時々テレビでやっているやつだ。『探偵ガリレオ』と『予知夢』の2作は入院中に読んでいたので、迷わず買った。

実は、フジテレビ系列で放送されたドラマの本放送は見なかった。当時の番宣で「人が燃える」というのをみて、なんとなく三流ミステリのような感じがしたためだ。また、探偵ガリレオなる小説があること自体もそれまで知らなかった。番組終了後しばらくして、視聴率が良かったことを知り、ちょっと後悔したのを覚えている。それから約一年後、ふとした切っ掛けで原作を読むことになった。入院中の暇つぶしにと立ち寄った売店で、『探偵ガリレオ』と『予知夢』を見つけたのだ。

物理学がコンセプトのため仕掛けは納得いくが、実際はどうだろうと疑問を抱きながら読んだが、なかなか面白く、あっという間に読み終えた。入院中は何もすることがなく、テレビも面白くなかったので、読書には最適だったかもしれない。ただ、入院2週間目に入って、リハビリを始めた頃からのことだ。それまでは字を見ると目が回ってとてもつらかった。

退院後しばらくしてドラマの再放送があった。今回はちゃんと録画しみたのだが、原作と結構違っておりちょっとびっくりした。事件の内容や仕掛けは原作と同じなのだが、設定や話の展開が違っていた。ほんの少し違っているのもあれば、まったく異なる内容もあり、そこまで変えなくてもと思ったが、ある意味テレビのほうが面白いかもしれない。特に、福山雅治柴咲コウの掛け合いはなかなかのものであった。

『容疑者χの献身』は、犯人が数学者ということもあり、今までの「物理系」の事件とはちょっと異なっていた。実験は、「服を燃やす」だけだ。あとは、推理と犯人との駆け引きだ。最後の展開にはびっくりしたが、その時点で結末が想像できてしまったのはちょっと残念だった。読み終えた後、帯に書かれたコピー「運命の数式。命がけの純愛が生んだ犯罪。」が理解できた。
映画化で犯人役が堤真一と知り、それはないだろうとつぶやく、伊集院光石塚英彦だったら原作に近かったかもしれない、と。何れにしても劇場版も楽しみだ。わざわざ見に行くことはないだろうけど……。

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