上野日記

自分が主人公の小さな物語

小杉健治の『それぞれの断崖』を読んだ

小杉健治の『それぞれの断崖』を読んだ。1998年にNHK出版より刊行された長編小説で、少年犯罪を扱った社会派ミステリーだ。8月からフジテレビ系列でテレビドラマ(主演:遠藤憲一)が放送されるのを知り図書館に予約し、ようやく読むことができた。なお、2000年にはテレビ東京系列でドラマ(主演:三浦友和)が放送されたらしい。

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以下の概要は裏表紙より:

家庭内暴力をふるう不登校の中学生、志方恭介が刺殺された! 悲劇の夜、たまたま誘われて怪しげな店で遊んでいた父親・恭一郎は、妻や娘たちに恨まれ、警察やマスコミからは疑惑を受ける。やがて犯人が判るが、少年法で守られている犯人を糾弾する恭一郎は、逆に非難を浴びる。家庭も将来も失い、復讐心から犯人の母・はつみに近づいた彼は……。少年犯罪で崩壊した家族の苦悩と再生を描く傑作。

中学生の息子を殺され、犯人扱いされた父親。犯人が息子の同級生だとわかっても、世間やマスコミからバッシングされ崩壊していく家庭。あまりにも理不尽。犯人の母親を必死で見つけ出し、偽名を使って近づくが次第に愛情が芽生えてしまう。えっ、そんな方向に話が進むのかと少し苛立ちながら読み進める。最後は、あぁなるほどね。心が少し和らいだ。なかなか面白かった。

内容も面白かったのだが、文章もなにか純文学のそれを読んでいるような巧みな表現が素晴らしく、別の作品も読んでみたくなった。





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